京大・神戸大 経済学部編入試験に向けての独学

私が実際に合格しました、京都大学、神戸大学の経済学部編入試験について書き記したブログです。

大学編入のためのミクロ経済学

 大学編入におけるミクロ経済学について、参考書紹介を中心に書きたいと思います。

 マクロ経済についてはこちらからどうぞ。

mozuku-lifework.hatenablog.com

 

大学編入におけるミクロ経済学

 大学編入試験において出題されるミクロ経済学のレベルは初級〜中級になります。正直、どこまでが初級レベルでどこからが中級レベルなのかは曖昧ですが、大学編入試験のミクロ経済学対策では中級レベルであるミクロ経済学のテキスト(下記で紹介する奥野ミクロなど)まで勉強すると神戸大学レベルあたりのミクロ経済学の問題を楽に解くことができるようになりますので、中級レベルまで勉強することをお勧めします。特に京大志望の方は尚更ですね。ただ、中級レベルといっても、中級レベルのミクロ経済学の範囲全てが出題されるわけではなく、私が受けた実際の試験や過去問を見る限りは、芦屋ミクロの目次を参考にしますと、消費者行動の理論〜企業行動の独占・寡占までの範囲+ゲーム理論が出題範囲なのではないかと思います。おそらく外部性や公共財は出題されにくいのではと思います。(あくまで当時私が感じたことであり出題傾向は変化することがあるので注意してください。)あまり出題の傾向に大きな差はないかと思いますが、私の考えとしては、神戸大学ゲーム理論が出題されやすいかと思います。東北大学は記述式で答えさせる問題が多く、また、京都大学ミクロ経済学の枠組みで行動経済学関連の出題が見られます。行動経済学に関しては別の記事において参考書を紹介していますのでよろしければそちらをご覧ください。

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参考書レビュー

 私が実際に使用しましたミクロ経済学参考書について書きたいと思います。

ミクロ経済学(芦屋ミクロ)

 通称、芦屋ミクロですね。神戸大学の芦屋先生が書かれたミクロ経済学のテキストです。私のミクロ経済学の勉強の際の最初の1冊です。
 この本のコンセプトとしては、1. 数式をなるべく使わない、使うにしても簡単な偏微分などのみであること 2.例題や演習問題とその答えが収録されていること、でしょうか。特に例題や演習問題が載っているだけでなく丁寧な解答付きであるという点が高評価です。教科書と問題集が別々になっているテキストが多い一方で、問題を実際に解くことはやはり重要ですのでこの1冊で一通りの勉強ができます。
 とくにお勧めしたい章はゲーム理論の章です。私が取り組んだミクロ経済学の教科書の中でゲーム理論に関しては一番良かったのではないか(もちろん、ゲーム理論専門のテキストの方が詳しいですが...)と思います。私が神戸大学を受けた時、ゲーム理論が出題されましたので神戸大学を始めゲーム理論が出題される可能性のある大学を受ける方にはゲーム理論の章だけでも目を通して欲しいと思います。1つ言うのであれば、この本のゲーム理論の混合戦略はグラフを用いて考えると理解しやすいかもしれないので別途参照するといいかと思います。
 
    一方で、このテキストについて、数式をなるべく使わないようにしているあまり、逆に分かりづらいものになっているという印象を受けました。特に公式をそのまま当てはめるという考え方はお勧めできません。その公式を導出できるようになることが重要かと思います。

 もちろん、このテキストはミクロ経済学が一通り学ぶことのできる良い教科書ですので、一通り読み、初級から中級のミクロ経済学の全体図をぼんやりと把握した後、すぐ次のテキストに進むのが良いと思います。そして、その後、このテキストに戻ってきて演習問題を解きつつもう一度読むことをお勧めします。その時には理解しやすいものになっており良い復習になるかと思います。例えば、私の場合、このテキストを一周しただけでは、付属している演習問題を解くことが全くできませんでしたが、下記の奥野ミクロに取り組んだ後にはスラスラと解けるようになっていたので、勉強を始めたばかりでは問題が解けなくても気にする必要はないかと思います。

ミクロ経済学(奥野ミクロ)

 ミクロ経済学を勉強する際に2冊目の参考書として使用しました。最も長い時間取り組んだミクロ経済学参考書です。


 この参考書のレベルは中級レベルに当たります。以前紹介しました芦屋ミクロと比較しても、「ラグランジュの未定乗数法」も出てきますし、より数学的な参考書になります。主に京都大学を志望する方向けの参考書でしょうか。神戸大学等を志望される方にとっては少しオーバーワークになるかもしれませんが、ミクロ経済学を数学的に捉えることはミクロ経済学の理解に繋がるので取り組んで損はありません。大学によっては出ないような分野もありますので、出そうな範囲だけに絞って読んでみてください。後半部分の公共財などは出にくい、または出ないのではないでしょうか。また、始めの箇所で、選好の前提条件となる完備性や推移性、連続性など、何やら難しそうな説明が載っています。この参考書の最初の部分で面食らい、挫折してしまわないように、この部分をしっかり理解せずとも最初はOKです。時間があれば理解するように努めたら良いと思います。ただし、完備性とは何か?というような語句の意味を答えさせる問題が出るおそれはありますので意味だけは暗記するようにお願いします。
 

 また、この参考書に取り組みますと、実際に問題を解く際に、とりあえず最大化問題を立てて機械的に解くことが習慣になるかもしれません。良いことなのですが、例えばいざ「限界代替率とは?」という問題が出た際に「なんだったっけ?」ということになる可能性があるので試験日が近づいてきたら計算問題を解けるだけでなく、語句の定義や意味もしっかりと思い出すようにしてください。この参考書の後に1度芦屋ミクロをもう一度読み直すこともお勧めです。

ミクロ経済学演習

 上記の奥野ミクロの問題集になります。ラグランジュの未定乗数法を使用する練習にもなり良い問題集であると思いますが、大学編入試験に対してはオーバーワークになるかと思います。京都大学を目指す方にとっては選択肢に入る問題集であるかと思いますが、神戸大学などを目指す方にとっては取り組む必要性は低いです。私自身、実際の試験では京都大学を受けた際にもラグランジュの未定乗数法は用いなかったので、この問題集は優先度の低いものかもしれません。

演習ミクロ経済学

 ミクロ経済学の問題集としては有名なテキストなのではないでしょうか。京都大学ミクロ経済学の講義の指定教科書の1つです。本来大学院入試のために使われるようなテキストかと思われますが、京都大学はこのくらいのレベルのミクロ経済学の問題を出題してきますので特に京都大学志望の方にとってはミクロ経済学の問題集の選択肢の1つとなります。私自身もこの問題集を京都大学の試験直前まで使用していました。少しレベルが高い問題集となりますので、全ての問題に取り組む必要はなく、必要だと思われる部分のみを解くのが良いかと思います。

 

 収録問題集も多く、試験対策にはいいかとは思いますが、一方で解答にラグランジュは使用されていませんので奥野ミクロとの間にギャップが生じたことが困った点でした。ただ、編入学試験ではとりあえず答えを出すことが重要ですので、編入試験対策、特に京都大学の試験において必要なのかなと思います。

ミクロ経済学の力(神取ミクロ)、ミクロ経済学の技

 今や有名なミクロ経済学のテキストの1冊ですね。ミクロ経済学の力は経済学の教科書であり、ミクロ経済学の技は教科書に準拠した問題集になります。この教科書及び問題集の特徴としては、ミクロ経済学を机上の空論ではなく実際に現実社会に応用することをコンセプトにしていている点ではないかと思います。特に問題集にそのコンセプトが反映されており、今までとは一風違った問題集になっていると感じましたが、それ故に編入試験対策には不要であると思いました。編入試験では、ミクロ経済学を現実に応用することはあまり求められませんし、とりあえず出題された問題の答えを出すことを重要視されるかと思いますので、ミクロ経済学の力はともかく、その問題集であるミクロ経済学の技の方は不要であると思います。編入試験が終わったら取り組むのが良いかと思います。

 

おわりに

 ここまで読んでいただきありがとうございます。ミクロ経済学マクロ経済学と比較すると、数学的な要素を多く含む印象を受けます。なので計算問題を解くことができるということは重要ですが、とりあえず計算問題の答えを出すことに意識が集中するあまり、ミクロ経済学の語彙の意味などを忘れてしまうことに注意して欲しいと思います。編入試験では計算問題よりも、むしろミクロ経済学の現象をうまく言葉で表現できるかどうかで受験者間で大きな差が生じるのではないかと思います。 とくに受験日が近づいた際には、語彙などの意味をしっかりと理解しているかに観点を当てて復習することをお勧めします。